アクセス管理とは? 目的や必要になるプロセス、注意点を解説

企業では様々な機密情報や個人情報を扱っており、これらの情報へのアクセスを適切に管理しなければ、重大な情報漏洩が発生するリスクがあります。アクセス権限が過剰であったり、誰がどの情報にアクセスしたかを把握できていなかったりする状況は、企業の信頼を大きく損なう結果につながりかねません。では、アクセス管理はどのように実施すればいいのでしょうか。
本記事では、アクセス管理の目的や必要なプロセス、注意点などを解説します。
アクセス管理とは、特定の情報に対するアクセス権限を管理者が制御すること
アクセス管理とは、社内ネットワークやクラウドサービスなどに保管されている特定の情報に対して、誰がどのような権限でアクセスできるかを管理者が制御することです。情報の閲覧・編集・削除といった操作を、ユーザーID単位で細かく設定し、情報漏洩のリスクを最小限に抑えることが目的です。
一般的には、従業員ごとにアカウントを割り当て、その職務や所属部署に応じて、業務に必要な範囲でのみアクセス権限を付与します。これにより、不要な情報へのアクセスを防ぎ、誤操作や内部不正による情報漏洩の可能性を減らすことができます。
さらに、アクセス管理の範囲はデジタルな領域だけにとどまりません。オフィスの入退室を制御するためにセキュリティカードを使用するなど、物理的・技術的な側面からの対策も含まれます。
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アクセス管理の目的
アクセス管理の目的は、企業が保有する機密情報や個人情報を不正アクセスや誤操作から守り、情報漏洩のリスクを抑えることです。
情報漏洩が発生すれば、顧客の信頼を失うだけでなく、社会的な信用の低下や法的責任の追及、営業機会の喪失といった深刻な影響が出る可能性があります。そのため、業務に必要な範囲内に絞って情報へのアクセスを許可し、情報を扱える人を最小限にして、情報漏洩が発生する可能性を抑えることが重要です。
なお、アクセス管理は外部からのサイバー攻撃だけでなく、内部不正の抑止にも有効です。従業員による不正行為や退職後の不正アクセスを未然に防ぐには、アクセス権限の管理が欠かせません。
アクセス管理を正しく運用することで、情報セキュリティの基盤を強化し、組織全体の安全性を高めることができます。
適切なアクセス管理を行わない場合に発生するリスク
アクセス管理が不十分な場合、企業は重大なセキュリティリスクにさらされます。下記では、代表的な3つのリスクについて解説します。
アカウントの不正利用
アクセス権限が適切に管理されていないと、アカウントが不正利用される可能性が高まります。例えば、退職者のアカウントが削除されずに残っていた場合、第三者がそのアカウントを使って機密情報にアクセスする事態につながりかねません。
誤操作による情報漏洩
情報漏洩は悪意のある行為だけでなく、誤操作によっても発生しますが、不十分なアクセス管理がそのような情報漏洩のリスクを増大させるおそれもあります。必要のないユーザーに広範なアクセス権限が与えられていると、誤って機密ファイルを削除したり、外部に送信してしまったりする可能性も高まるため、注意が必要です。
アクセス管理を適切に行えば、業務に不必要な情報へのアクセスが制限されるため、ヒューマンエラーによる情報漏洩のリスクを軽減できます。
アクセス権限の管理基準や責任の不明瞭化によるトラブル
アクセス管理が形式的に導入されていても、適切な運用体制が整っていなければ、情報漏洩の発生や業務の停滞などのトラブルが生じかねません。
例えば、誰がどの基準で権限を付与・変更・削除するかが明確でない場合、過剰な権限の付与や、必要な権限が付与されないといった事態が発生します。また、管理責任者が不在であったり、曖昧だったりするケースでは、アクセスログの確認や追跡は困難です。このような状況で情報漏洩が発生したら、原因の特定や対策の実施が遅れ、被害が拡大してしまうおそれがあります。
アクセス管理のプロセス
アクセス管理を適切に行うためには、体系的なプロセスに従って運用することが重要です。下記では、一般的に採用されている5つのプロセスを紹介します。
1.アクセス権限の申請・受付
アクセス管理の最初のステップは、従業員などのユーザーによるアクセス権限の申請です。どの情報に、どのような目的でアクセスしたいのかを明確にし、管理者に申請します。情報の種類や業務内容に応じて、申請の内容やルートを整備しておくことが重要です。
2.検証
アクセス権限の申請があったら、提出された申請に対して管理者が内容の妥当性を確認します。業務の必要性や申請者の役職、所属部署などを踏まえ、本当にそのアクセスが必要かどうかを検証します。
3.アクセス権限の付与
検証を経てアクセスの必要性が承認されたら、管理者がアクセス権限を付与します。ユーザー単位やグループ単位で、閲覧・編集・削除などの操作権限を細かく設定するのが一般的です。必要最小限の権限にとどめる「最小権限の原則」を徹底しましょう。
4.監視
アクセス権限を付与した後は、それが適切に利用されているかを管理者が継続的に監視します。例えば、深夜や休日の不審なアクセス、通常の業務範囲を逸脱した操作などを検知できる仕組みがあると、リスクの早期発見につながります。
5.ログの記録と追跡
アクセスの監視を開始したら、すべてのアクセスログを記録しておくことも、重要なプロセスです。「いつ」「誰が」「どの情報に」「どのような操作をしたか」を明確にすることで、万が一情報漏洩が発生した際の原因の特定や対応が迅速に行えます。
アクセス管理の注意点
アクセス管理は情報漏洩を防ぐために有効な手段ですが、運用する方法や仕組みには細心の注意が必要です。
例えば、アクセス権限の設定や見直しを手作業で行う場合、対応漏れや付与する権限の範囲の設定ミスが発生しやすくなります。特に、入退社や異動が集中する時期は、管理者の負担が増え、設定ミスが起こりかねません。誤ったアクセス権限の設定は内部不正や情報漏洩につながるため、正確に対応できる仕組みが必要です。
また、組織が大きくなるにつれて、誰にどの権限を与えるべきかの判断や管理は複雑になります。アクセス権限の設定や履歴の管理をExcelに手入力する方法などで行っていると、入力ミスが起きたり、情報管理が煩雑になったりして、運用が破綻してしまうことも珍しくありません。
そのため、アクセス管理はなるべくシステム化し、自動化できる部分はツールに任せるのが望ましい運用方法です。定期的なアクセス権の棚卸しや、リアルタイムでの不審なアクセスの検知が可能なツールを導入することで、より確実で効率的なアクセス管理が実現できます。
適切なアクセス管理を導入して、情報漏洩を防ごう
アクセス管理は、企業が保有する重要な情報を守るための基盤となるセキュリティ対策です。権限の設定を通じて、情報への不正アクセスや誤操作による漏洩リスクを最小限に抑えることができます。
しかし、アクセス管理は導入して終わりではなく、継続的に運用して、必要に応じて管理方法を改善しなければなりません。さらに、手作業による管理には限界があるため、信頼できるアクセス管理ツールの導入を検討することも重要です。
例えば、インターコムが提供する「MaLion」シリーズには、アクセス管理に役立つファイルアクセス監視機能が搭載されています。この機能では、読み込み・書き込み・移動・コピー・名称変更・削除などの操作を監視し、セキュリティポリシーに反する行為に対しては、実行制限や警告表示を行うことが可能です。情報セキュリティを強化したいと考えている場合は、「MaLion」シリーズをぜひご検討ください。