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タイムカードの打刻忘れが引き起こす企業への影響とは? 防止策を解説

打刻忘れ
タイムカードの打刻忘れが引き起こす企業への影響とは?防止策を解説

タイムカードの打刻忘れは、従業員にとって「うっかり」で済まされることがあっても、企業にとっては見過ごせない問題です。従業員による打刻忘れは、給与計算の煩雑化や不適切な労務管理の誘発、残業代の未払いによる法的リスクなど、様々な影響が及ぶ可能性があります。では、打刻忘れを防ぐためには、どのような対策を講じる必要があるのでしょうか。
本記事では、企業が直面する打刻忘れの影響とその原因、防止策などを解説します。

打刻忘れが企業にもたらす影響

打刻忘れは、単なる個人のミスにとどまらず、企業全体の業務や法的リスクに波及する深刻な問題です。打刻忘れが企業にもたらす影響の代表例としては、下記3点が挙げられます。

給与計算業務の煩雑化

打刻忘れが発生すると、従業員の勤務時間を正確に把握することが難しくなり、給与計算業務に影響を及ぼします。例えば、勤務時間の記録が曖昧になった場合、人事部門は本人への確認や上司への聞き取りといった追加業務に対応しなければなりません。

さらに、修正申請の処理や承認など、煩雑な事務作業が増えることで、限られた人事リソースを圧迫する要因にもなります。これは、業務の非効率化を招くだけでなく、業務負担増加による他の業務でのミス発生リスクも高めます。

不適切な労務管理の誘発

打刻忘れによって、正確な勤務時間の記録ができなくなると、不適切な労務管理を誘発する可能性もあります。

労働基準法では、従業員の残業時間は原則として月45時間、年360時間以内にすることと定められています。打刻忘れが頻発して適切な労働時間の管理がなされていない場合、この規定に反した状態が発生していても、企業側は気付くことができません。この規定に違反すると、経営者に6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金を科される可能性があります。

また、アルバイトなどの時給制の従業員にとっては、打刻忘れによって勤務時間が正しく反映されず、給与が本来の金額より少なくなるといった直接的な影響も生じます。

残業代の未払い

退勤時の打刻忘れは残業時間の計算に直結し、残業代の未払いが発生するリスクがあります。従業員に本来支払うべき残業代が支払われない場合、企業に下記のような影響が及ぼしかねません。

残業代未払いで企業に生じるリスク
  • 悪質な場合、経営者に刑事罰の可能性がある(6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金)
  • 未払い分の残業代の支払いと遅延利息が発生する
  • 企業イメージが低下する
  • 従業員のモチベーションが低下する

このように、打刻忘れは単なる人的ミスでは済まされず、労務トラブルなどのリスクに直結する可能性があります。

打刻忘れの主な原因

打刻忘れは、従業員の注意不足だけでなく、企業側が用意している打刻の環境などに原因があるケースもあります。打刻忘れにつながりやすい原因を、4つの視点から解説します。

打刻手続きが煩雑になっている

打刻に至るまでの操作が複雑である場合、従業員が面倒に感じて打刻を後回しにしたり、忘れてしまったりする可能性があります。

例えば、打刻をシステム上で行うケースで、ログインやアプリの起動、確認画面の操作など複数のステップが必要だと、早く業務に着手したいあまり打刻作業と並行して業務を始めるケースを誘発することがあります。打刻作業を完了しないまま業務に集中してしまうと、打刻忘れにつながるでしょう。

打刻の作業が習慣化しにくくなっている

打刻の作業が習慣化しにくくなっている環境がある場合も、打刻忘れを誘発します。例えば、テレワークと出社を併用するような勤務体制で、勤務形態ごとに異なる打刻方法を使っていると、日々異なる作業を要求されるため打刻自体が習慣として定着しにくくなります。
習慣化のためには、勤務形態にかかわらず一貫した打刻手段を整備し、誰でも自然に打刻できる仕組みづくりが必要です。

気付かれにくい場所にタイムレコーダーが設置されている

事務所にタイムレコーダーの機器を設置して打刻している場合、タイムレコーダーが職場内の動線から外れた場所にあると、打刻忘れを招く原因になります。事務所の入口から離れた場所など、出社時にすぐにアクセスしにくい場所に設置されていると、従業員がタイムレコーダーの存在を意識しにくくなるため、打刻の機会を逃しやすくなります。

機器を設置する際は、業務の開始・終了時の動線上に設置しましょう。

出張や直行直帰が多い

外回りの営業職など、出張や直行直帰が多く事務所への立ち寄りが少ない職種では、そもそもタイムレコーダーに触れる機会が少なく、打刻忘れが起こりやすくなります。このような従業員がいる場合は、スマートフォンやクラウド対応の打刻システムを導入し、外出先からでも手軽に打刻できるようにする必要があるでしょう。

さらに、定期的に打刻状況を確認する仕組みを整えることも、打刻忘れを未然に防ぐためには有効です。

打刻忘れの防止策

打刻忘れを防ぐためには、従業員の意識改革と共に、環境整備やシステム面での支援が欠かせません。主な打刻忘れの防止策としては、下記5点が考えられます。

視覚的な注意喚起

打刻を忘れないよう促すには、従業員の目に常に入る場所で注意喚起することが効果的です。

例えば、業務用パソコンの起動後の画面やホワイトボードに「打刻を忘れずに!」といったメッセージを表示することで、自然と打刻の意識を高められます。また、タイムレコーダーを目立つ場所に設置することや、打刻状況を一覧表示して「誰がまだ打刻していないか」を可視化する仕組みも防止策になります。

労務管理の重要性の周知

打刻忘れを防ぐには、労務管理の重要性の周知と同僚同士の声かけも重要です。

従業員が「労務管理は企業側の都合」と認識している場合、打刻の重要性が伝わりにくくなります。企業側が、勤怠時間の不適切な管理による企業側・従業員側のリスクと管理の重要性を周知し、正確な打刻の必要性を理解してもらうように働きかけましょう。

同僚同士の声かけ

打刻忘れ防止のために、同僚同士で「打刻しましたか?」などと声をかけ合う文化を醸成することも効果的です。その前提として、従業員同士がコミュニケーションをとりやすい職場環境を作ることも重要になります。

打刻管理の責任者の設定

打刻状況を管理する責任者を設定して管理体制を整えることも、打刻忘れの抑止に有効です。部署やチームごとに責任者を設定し、その人が所属するメンバーの日々の打刻状況をチェックする役割を担うことで、抜け漏れの早期発見が可能になります。

責任の所在を明確にすることで、従業員側の打刻意識も高まりやすくなります。

スマートフォンやパソコンへの通知

打刻忘れの防止策として、パソコンやスマートフォンに搭載されているリマインダー機能を活用することで、業務開始時や退勤直前に通知を送信する方法も考えられます。

パソコンやスマートフォンのカレンダーやスケジュール管理機能には、予定の開始時刻が近づいた場合に通知を表示するリマインダー機能が搭載されています。その機能を活用して、例えば出社時刻の5分前や定時退社時刻の数分前に通知が届くよう設定することで、タイミングよく打刻を促すことが可能です。

勤怠管理システムの導入

打刻忘れを減らすためには、使いやすくてミスが起こりにくい勤怠管理システムを導入するのも有効です。スマートフォンから簡単に打刻できるシステムであれば、環境に左右されず、外出先や在宅勤務中でも打刻しやすいという利点があります。従業員の手間が少ないシステムを導入することで、打刻の心理的ハードルを下げることができます。

打刻忘れが発生した際の対応

万が一、打刻忘れが発生した場合は、従業員の給与にも影響する可能性があるため、迅速に対応しなければなりません。打刻忘れが起きた際には、下記の手順で対応しましょう。

1.本人への事実確認

打刻忘れが発覚した際に最初に行うのは、打刻を忘れた従業員本人への事実確認です。「実際には何時に出勤・退勤したのか」「なぜ打刻を忘れたのか」といった情報を正確にヒアリングし、必要であれば上司や同僚にも確認をとります。勤務状況の実態の証拠として、メールや日報、システムログなどを併せて確認しておくのも有効です。

確認内容は記録として残しておくことで、同様のトラブルが起きた際の参考になります。また、場合によっては始末書を提出してもらい、打刻の重要性を従業員に認識させることも検討しましょう。

2.給与の再計算

本人への事実確認が完了したら、給与の再計算が必要かどうかを検討します。打刻忘れによって勤務時間の記録が不完全になっている場合は、記録を修正した上で正確な勤務時間を基に給与の再計算を行いましょう。

従業員にとっては、適正な報酬を受け取るための重要な対応であり、企業側にとっても、労働基準法などの関連法規を遵守するために不可欠な手続きです。

3.打刻ルールの再検討

打刻忘れの原因を明らかにして給与の再計算にも対応したら、現状の打刻ルールに修正の余地がないかを見直します。「手順が煩雑すぎる」「ルールの認知度が低い」「リマインダーが機能していない」などの要因が見つかれば、それに応じてルールや環境を改善することで再発防止につながります。従業員が守りやすいルールになるよう意識して整備していくことが重要です。

打刻忘れを原因とした減給の違法性

従業員が打刻を忘れた場合でも、そのことを理由に直ちに減給処分とすることは、労働基準法に抵触する可能性があります。

打刻忘れがあったとしても、企業は原則としてその労働時間に見合った賃金を支払わなければなりません。これは「賃金全額払いの原則」と呼ばれる原則に基づいたルールで、労働基準法第24条に規定されています。また、打刻忘れを理由に一律で給与を減額する規定を就業規則などに設けた場合、労働基準法第16条で禁止されている「違約金の定め」に該当し、違法となる可能性があります。

一方で、繰り返し打刻を忘れる従業員に対し、服務規律違反として懲戒処分を検討し、懲戒処分の一環として減給処分をすることは可能です。その場合は、以下の4点に注意しましょう。

懲戒処分として減給を行う際の注意点
  • 打刻忘れが懲戒処分の対象になることを就業規則などで明示しておく
  • 処分理由と処分内容が釣り合っている必要があるため、最初は口頭で注意し、改善が見られない場合は始末書を提出させるなど、段階的な対応を行ってから減給を行う
  • 1回あたりの減給額は、1日分の平均賃金の半額以下にする
  • 減給の総額は、1回の賃金支払期における賃金の総額の10分の1以下にする(例:月給30万円の従業員の場合、月の減給の総額は3万円以下)

勤怠管理システムのメリット

打刻忘れを防止し、企業の労務管理を効率化する上で、勤怠管理システムの導入は有効です。勤怠管理システムの主なメリットは、下記の通りです。

打刻忘れを通知できる

勤怠管理システムには、各従業員の打刻状況をリアルタイムで把握し、未打刻の場合にアラートを出す機能が備わっている点がメリットです。これにより、管理者もすぐに状況を把握でき、従業員に早期の対応を促すことが可能になります。ミスの早期発見により、打刻忘れが常態化する前に是正することが可能です。

スマートフォンによる打刻にも対応している

勤怠管理システムの中にはスマートフォンに対応したものもあり、専用アプリを通じて外出先やテレワーク中でも手軽に打刻が行える点もメリットと言えます。システムによっては、ICカードや顔認証、指紋認証など様々な認証手段にも対応しています。自社の状況や勤務形態に適したシステムを選べば、従業員の利便性が向上し、打刻忘れを減らすことも可能です。

給与計算業務を効率化できる

勤怠管理システムのメリットは、勤怠データを自動的に集計し、給与ソフトと連携させることで、給与計算業務の効率化が実現できる点です。人為的なミスが減少するうえ、担当者の作業負荷も軽減され、他のコア業務に集中できる環境が整います。また、正確な勤怠記録に基づいた給与支払いが可能になるため、残業代未払いなどのリスクの低減にもつながります。

打刻の状況とパソコンの稼働ログを照合できるシステムもある

一部の勤怠管理システムには、IT資産管理ツールとの連携機能があり、打刻の状況とパソコンの稼働ログを照合できる点もメリットです。パソコンの稼働ログデータを収集できるIT資産管理ツールとの連携によって打刻時間とパソコンの稼働時間を比較できるため、打刻を忘れて業務を行っている従業員や、打刻後にサービス残業している従業員をひと目で確認できます。

この機能を活用したい場合、勤怠管理システムに加えてIT資産管理ツールの導入も必要です。

打刻忘れを防ぎ、適切な勤怠管理を実現しよう

タイムカードの打刻忘れは、給与計算のトラブルや法令違反のリスクにつながる、企業にとって看過できない課題です。その防止には、視覚的な注意喚起や勤怠管理の重要性を周知するだけでなく、従業員が打刻しやすい環境を整えることも必要になります。勤怠管理システムの導入は、打刻の習慣化やミスの可視化、労務管理の効率化に有効な対策と言えるでしょう。

さらに、勤怠管理システムとIT資産管理ツールを連携すると、より正確に勤務実態を把握することが可能になります。インターコムのIT資産管理ツール「MaLion」シリーズなら、パソコンの稼働状況を記録し、勤怠管理システムの打刻状況と比較したレポートを従業員ごとに出力できます。2025年6月現在で10種類の勤怠管理システムと連携可能です。長時間労働やサービス残業の把握・是正、労務管理に課題を感じている場合は、ぜひ導入をご検討ください。

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