FAXのDX化が進まない理由とは? FAX業務をデジタル化するメリットと代替手段を解説

DX化が進む中でも、多くの企業ではいまだにFAXが現役で使われています。特に受発注や取引先とのやり取りでは「紙のFAXが欠かせない」と考える企業も少なくありません。しかし、その一方で紙や複合機などに依存するFAXは「業務効率が悪い」「テレワークに対応できない」といった課題が顕在化し、脱紙FAXの必要性が高まっています。
ではなぜFAXのDX化が難しいのでしょうか。今回は、FAXのDX化が進まない理由を整理しながら、デジタル化によるメリットと、クラウドFAXやビジネスチャットなどの代替手段について解説します。
そもそもDXとは?
DXは「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」の略称であり、企業の業務プロセスや事業の在り方そのものをデジタル技術で改革し、新たな価値を創造する取り組みを意味します。
AIやビッグデータ、クラウド、IoTといった先端技術を活用することで、業務効率を高めるだけでなく、顧客体験の向上や新しいビジネスモデルの構築を可能にします。
DXとIT化、デジタル化の違い
「DX」と似た意味をもつ言葉に「IT化」や「デジタル化」があります。「IT化」とは、ITシステムやツールを導入し、既存の業務を効率化することを指します。例えば、紙の台帳で管理していた在庫をExcelに入力するようにした場合はIT化です。
一方「デジタル化」は、アナログな作業やデータをデジタルに置き換えることを意味します。紙の請求書をPDFに変換して送るのがその一例です。
そして「DX」は、これらをさらに発展させ、業務効率化だけでなく、サービスやビジネスモデルそのものを進化させて新しい価値を生み出すことを目的としています。
例えば、単にオンラインで商品を売るのではなく、顧客データをAIで分析してパーソナライズされたサービスを提供する、といった取り組みがDXの具体例です。
| 区分 | 目的 | 例 |
|---|---|---|
| IT化 | 業務の効率化 | ツール導入(「紙」を「PC」に) |
| デジタル化 | プロセスの最適化 | プロセス改善(「郵送」を「データ送信」に) |
| DX | ビジネスモデルの変革と新たな価値創出 | イノベーション(「提供方法」や「商品」そのものの変化) |
FAXのDX化が進まない理由
DXの推進において、FAX業務のデジタル化は依然として大きな課題です。多くの企業では紙のFAX運用が根強く残っており、完全な電子化・クラウド化に移行できていないのが現状です。ここでは、なぜFAXのDX化が進まないのか、その理由について解説します。
取引先が紙FAXを利用している
取引先が紙FAXを主な連絡手段としている場合、紙FAXそのものを廃止するには慎重な対応が求められます。
特に、紙FAXからクラウドストレージやビジネスチャットなど別の手段へ切り替える場合は、取引先側の準備や運用変更が必要となるため、スケジュールや手順をすり合わせながら段階的に進める必要があります。こうした取引先との調整の手間が、FAX業務のDX化を遅らせる大きな要因となっています。
一方、自社のみでクラウドFAXを導入する場合は、取引先は従来通り紙FAXで送受信できるため、影響を与えずに自社のFAX業務をデジタル化することが可能です。
業務フローの変更が難しい
FAX業務をDX化するには、単に送受信方法を変えるだけではなく、業務全体の流れを見直す必要があります。例えば、受注から承認、出荷までの一連の流れがFAXを前提として設計されている場合、その部分をまるごと再設計しなければなりません。
さらに、紙での確認や押印を伴う承認フローを電子化するには、社内規定や取引先との取り決めを変更する必要も出てくるでしょう。業務プロセスの見直しには多大な時間と労力がかかり、現場の負担感も大きくなります。
そのため、業務が繁忙期であればなおさら導入が後回しになりやすく、結果として紙FAXの利用が続いてしまいます。
従業員のITリテラシーが低い
FAXは「電話番号を押すだけで送れる」という手軽さから、年齢やスキルを問わず幅広く利用されてきました。一方で、クラウドサービスや専用システムの導入には、操作方法の習得が欠かせません。
特に従業員のITリテラシーが十分でない場合、新しいシステムに対する心理的ハードルが大きく、導入が進まない要因になります。
代替システムの費用がかかる
FAXをDX化するには、代替システムの導入が必要です。例えば受発注業務であれば、専用の受発注システムやEDI(電子データ交換)を整備する必要があり、その構築には初期費用がかかります。さらに導入後も、システムの保守やアップデートなど継続的なコストが発生します。
こうした総合的なコストを考えると、短期的には従来のFAX業務のまま継続する方が合理的と考える企業が少なくありません。
FAXをDX化することで得られるメリット
FAXをDX化することで業務の効率化やコスト削減はもちろん、柔軟な働き方の実現やセキュリティ面の強化など、多角的な効果が期待できます。
ここでは、企業がFAXのDX化を進めることで得られるメリットについて解説します。
業務効率化や生産性の向上につながる
FAXによる書類送受信は、一見シンプルにみえても多くの手間がかかります。送信時には印刷や送付状の準備が必要で、受信した書類は整理・保管の作業が欠かせません。また、送信エラーや文字のかすれ、送付先の確認といった細かなトラブルが業務を妨げることもあるでしょう。
これらの非効率をDX化によって解消すれば、作業時間を大幅に削減でき、従業員はルーチンワークに追われることなく、本来注力すべきコア業務や付加価値の高い業務に取り組めます。その結果、組織全体の生産性が向上し、限られた人員でもより多くの成果を出せるようになります。
ペーパーレス化を実現できる
FAXの利用には、紙やインクといった消耗品のコストがつきものです。さらに、紙の保管には物理的なスペースが必要で、管理の手間も増えます。
FAXのDX化が実現すれば、紙の使用量を大幅に削減できるため、環境負荷を軽減しつつコスト削減にもつながります。
また、FAX機器自体のメンテナンス費用や電話回線の契約費用も不要となり、経費の見直しが可能です。加えて、紙を使わない業務環境は書類の検索や共有が容易になり、情報の利便性も向上します。
テレワークを推進できる
FAXは物理的な機器に依存するため、オフィスにいなければ送受信できません。しかし、FAXのDX化を進め、クラウド型の文書管理や電子契約システムを導入すれば、インターネット環境さえあればどこからでも業務を進めることが可能です。
従業員は在宅勤務や外出先からでも柔軟に働けるようになり、働き方改革の実現や人材の定着につながります。
セキュリティを強化できる
FAXは紙で出力されるため、送受信の際に他の従業員の目に触れるリスクがあります。また、誤送信によって意図しない相手に機密情報が届く可能性も否定できません。
一方で、デジタルな代替手段であれば、アクセス権限の設定や暗号化といったセキュリティ機能を活用できる上、送信先を自動で確認・制御できる仕組みを備えているため、誤送信のリスクも大幅に低減できます。
例えば、ビジネスチャットやクラウドストレージを使えば、必要な担当者だけに情報を限定して共有でき、情報漏洩のリスクを最小限に抑えられます。
FAXをDX化するための手段
FAXのDX化を進めるには、自社の業務フローや取引先の環境に合わせて適切な手段を選択することが重要です。
ここでは、FAX業務を置き換えるための代表的な3つの方法を紹介します。
クラウドストレージ
クラウドストレージは、インターネット上にデータを保存し、アクセス権限を持つユーザーのみが閲覧・編集できるサービスです。セキュリティ性が高く、誤送信のリスクも低減できます。
代表的なクラウドストレージサービスには、Google DriveやDropbox、OneDriveなどがあり、いずれもファイルの共有や共同編集、変更履歴の管理など、多様な機能を備えています。
また、大容量のファイルや複数の資料を一括で共有できるため、FAXでは対応が難しい図面や高解像度の資料の送受信にも適しています。アクセス履歴の管理やファイルの自動バックアップ機能を活用することで、業務の透明性と効率性が向上します。
ビジネスチャット
SlackやChatwork、Microsoft Teamsといったビジネスチャットは、FAXに代わる迅速かつ柔軟な情報共有手段として注目されています。メールのように形式ばった文面を用意する必要がなく、必要な情報を短文で即時に伝えられるため、コミュニケーションのスピードと効率が飛躍的に向上します。
また、WordやExcel、PDFなどのファイルもチャット上で直接共有できるため、資料のやり取りにも対応可能です。ファイルの送信状況や未読・既読の確認もできることから、FAXに比べて伝達ミスや確認漏れを防ぎやすくなります。
さらに、グループ機能を活用すれば、プロジェクトや部署ごとに情報を整理でき、やり取りの可視化と蓄積も容易です。
クラウドFAX
取引先が依然としてFAXを利用している場合、完全な脱FAXが難しいケースもあります。そのような場面で有効なのがクラウドFAXです。
クラウドFAXは、インターネット経由でFAXの送受信ができるサービスで、従来のFAX機や複合機を設置する必要がありません。PCやタブレットなどからFAXを確認・送信できるため、自宅や外出先でもFAX業務をすることが可能です。
また、FAX用紙やトナーの購入、機器の保守といった運用コストが不要になるため、コスト削減にもつながります。送受信の履歴は自動的にデジタル保存されるため、検索性や管理性の向上も期待できます。
FAXのDX化なら「まいと~く Cloud」が最適
「まいと~く Cloud」は、従来のFAX業務をクラウド上で効率的に運用できるクラウドFAXサービスです。FAX送受信をメール感覚で操作できる点が大きな特長で、既存の業務フローを大きく変えずに導入できます。
受信したFAXはクラウド上で一元管理でき、振り分けや閲覧、共有もすべてデジタルで行えるため、自宅や外出先でもオフィスと同じように業務を遂行できます。さらに、基幹業務システムとの連携機能を備えているため、受発注や請求処理などの重要な業務ともスムーズに統合可能です。
「FAXをすぐに廃止するのは難しいが、まずは受信や送信のクラウド化から効率化を進めたい」という企業にお勧めです。
まとめ
DXの推進は、単なる業務のデジタル化にとどまらず、企業全体の付加価値を高めるための重要な取り組みです。その中でも「脱紙FAX」は、多くの企業が直面している課題のひとつといえます。
クラウドストレージやビジネスチャット、クラウドFAXといった代替手段を導入することで、業務効率化・ペーパーレス化・テレワーク推進・セキュリティ強化といった大きなメリットを得られます。今後の企業競争力を高めるためにも、DX化に積極的に取り組んでみてください。
