FAXを使い続けているのは日本だけ? 廃止するメリットや代替手段を紹介

世界的にペーパーレス化やデジタル化が進む中で、「FAXを使い続けているのは日本だけだ」といわれることがあります。確かに、日本では一部の企業や業界でFAXが業務の中心的なツールとして使われています。では、なぜ日本ではFAX文化が根強く残っているのでしょうか。
今回は、日本におけるFAXの現状や利用され続けている理由について解説します。また、FAXを廃止することで得られるメリットや代替手段についても紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
日本におけるFAXの利用状況

総務省の「通信利用動向調査」によると、日本の世帯におけるFAXの保有率は年々減少しています。
- 令和元年 33.1%
- 令和2年 33.3%
- 令和3年 31.3%
- 令和4年 30.0%
- 令和5年 26.9%
FAXの保有率が減少しているのは、スマートフォンやPCの普及により、家庭でFAXを使う必要性が薄れたことが背景にあると考えられます。
一方で、企業におけるFAXの利用は依然として高い水準を保っています。一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会の調査によると、2023年で業務中にFAXを利用している人の割合は40.1%でした。これは、3年前(49.7%)と比較すると減少傾向ではあるものの、いまだに約4割の人がFAXを使っているという事実を示しています。

さらに、そのうちの半数は「日常的にFAXを利用している」と回答しており、ビジネス現場でのFAX利用が継続している現状がうかがえます。
※出典:総務省「令和5年通信利用動向調査」
一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会「ファクシミリの利用調査結果」
FAXは企業間取引の重要なツール
FAXの利用は確実に減ってきてはいるものの、特定の業界や業種では、今もなお欠かせないコミュニケーションツールです。
特に、小売業や卸売業、製造業などでは、FAXで発注書や見積書のやりとりをする文化が根強く残っています。これらの業界では、オフィスワークと異なり1人1台のパソコンがない現場環境が多く、紙で出力されるFAXが連絡手段として重宝されています。
また、受信したFAXに手書きで書き込みをして別の部署に引き継いだり、再送信したりする業務フローが定着しているためです。
このように、紙の帳票でやり取りすることが前提となっているため、完全にデジタルに移行するには業務フローの大幅な見直しが必要です。
そのほか、医療機関や警察などの公共機関でも、FAXはセキュリティ面で信頼されている手段のひとつです。従来から、FAXは電話回線を使用するため、インターネット経由の攻撃を受けにくいという理由で利用されてきました。
日本だけじゃない? 海外におけるFAXの需要
「FAXを使い続けているのは日本だけ」と思われがちですが、実は海外でもFAXの需要は残っています。特に、セキュリティを重視する業界や、重要な文書を確実に届ける必要がある場面では、FAXの信頼性が評価されています。
一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会の調査結果によると、アメリカでは約7割が仕事でFAXを利用しているとのことです。また、ドイツでは約5割が仕事でFAXを利用しており、そのうち8割以上が今後も使い続けると回答しています。
つまり、日本だけが取り残されているわけではなく、世界中で一定のニーズが存在していることがわかります。
※出典:一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会「米国におけるファクシミリの利用調査結果を公開 ~米国では今でも7割の方がファクスを利用!~」
一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会「ドイツにおけるファクシミリの利用調査結果を公開 ~ドイツでは今でも5割の方がファクスを利用!~」
日本でFAXが利用され続けている理由

デジタルツールの進化により、FAXに代わる連絡手段としてメールやチャット、クラウドサービスなど便利な選択肢が多数登場しています。それにもかかわらずFAXが日本で使われ続けているのには、どのような理由・背景があるのでしょうか。
ここでは、日本でFAXがなくならない理由を紹介します。
取引先や顧客がFAXを利用しているため
FAXを廃止できない大きな理由のひとつが、取引先や顧客との関係です。「取引先がFAXを使っている限り、自社もFAXを利用せざるを得ない」という企業は少なくありません。
例えば発注書や請求書など、相手からFAXで送られてくる場合、それを受信できなければ業務が止まってしまいます。
特に製造業や卸売業、建設業などの業界では、FAXが今も業務の基本インフラとなっているため、自社だけが先行して廃止することはビジネス上のリスクとなります。
確実性があるため
FAXは送信時に「送信結果レポート」が自動で出力されるため、書類が正しく送られたという証拠がその場で得られます。
送信後にトラブルが起きた際にも安心材料となり、ビジネス上の信頼性を担保する重要な機能といえるでしょう。
また、FAXは物理的に紙を出力するため、相手が必ず目にするという点もメリットです。メールのように迷惑メールに紛れたり、見落とされたりするリスクが低く、重要な連絡手段として安心して使えます。
ITツールよりも比較的簡単に使えるため
FAXは操作がシンプルで、複雑な設定が不要です。送信先の番号を入力し、原稿をセットして送信ボタンを押すだけで完了します。
一方、メールやクラウドツール、専用アプリなどは、導入や運用のための初期設定、セキュリティ対策、社内教育などが必要になる場合が多く、ITに不慣れな人にとってはハードルが高いのが現実です。
特に高齢の従業員が多い職場や、デジタル化にコストをかけにくい中小企業では、あえてFAXを使い続けているケースも少なくありません。
FAXを廃止するメリット

FAXは長年ビジネスにおける重要な通信手段として使われてきましたが、現代では、かえって効率を妨げる要因にもなっています。FAXを思い切って廃止することで、業務のデジタル化が進み、コスト削減やセキュリティの強化など、様々なメリットが期待できます。
続いて、具体的なメリットについて詳しくみていきましょう。
テレワークに対応しやすくなる
FAXを使用するには、オフィスに設置されたFAX機器を操作する必要があります。そのため、FAXが業務の一部に組み込まれていると、在宅勤務中の従業員が対応できず、FAX対応のためだけに出社を強いられることもあります。つまり、テレワーク制度があっても十分に活用できません。
FAXを廃止し、メールやクラウドサービスに切り替えることで、書類の送受信がどこからでも可能になり、場所に縛られない柔軟な働き方を実現できます。働き方改革を推進する上でも大きなメリットといえるでしょう。
ペーパーレス化によるコスト削減が期待できる
FAXは紙を前提とした通信手段であるため、紙やインク、トナーといった消耗品が必要になります。
さらに、保守費用や電話回線の基本料金など、ランニングコストも継続的に発生します。
FAXを廃止してペーパーレス化を進めることで、これらのコストを大幅に削減可能です。また、紙の書類が不要になることで保管スペースを削減でき、オフィスの省スペース化にもつながります。
データ管理が容易になる
FAXで送られてきた紙の書類は、ファイリングや保管といった作業が必要となり、探したいときに見つからない、紛失するといったリスクがあります。
一方、FAXを廃止し、デジタルデータで文書をやりとりすれば、フォルダー分けやキーワード検索、バックアップなどが容易になります。
クラウドサービスと連携すれば、部署間での情報共有もスムーズになり、業務のスピードと正確性が格段に向上するでしょう。
セキュリティの強化につながる
紙のFAXは一度送信すれば相手の手元に届くため、誤送信が発生した際に回収が困難であり、重大な情報漏洩につながるリスクがあります。
また、オフィス内でFAXを取りに行く途中に他の人に見られてしまうなど、意図しない情報漏洩の可能性も否定できません。
一方、電子データでのやり取りであれば、送信相手を特定した上でアクセス権限を設定したり、暗号化によって改ざんや盗聴を防止したりと、より高度なセキュリティ対策を講じることが可能です。
特に個人情報や機密情報を扱う業務では、FAXよりも安全な手段への移行が急務となっています。
FAXの代替手段
FAXを廃止する場合、その代替となる手段を選ぶことが重要です。ここでは、FAXの代わりになる効率的な通信手段を紹介します。
クラウドストレージ
クラウドストレージとは、インターネット上のサーバーにファイルを保管し、複数のユーザーでアクセス・共有ができるサービスのことです。代表的なサービスには、GoogleドライブやDropbox、OneDriveなどがあります。
クラウドストレージを利用すれば、紙の書類を印刷してFAXで送る必要がなくなり、データをクラウド上にアップロードし、共有リンクを送るだけで情報を届けることが可能です。
さらに、リアルタイムでの共同編集や履歴管理、アクセス制限なども可能なため、業務のスピードと正確性が向上します。セキュリティ面でも、パスワード保護や二段階認証などを活用することで、安全な情報共有が実現できます。
ビジネスチャット
社内向けのビジネスチャットは、メールよりもスピーディーにやり取りできるコミュニケーションツールで、社内のさまざまな部署とスムーズな連携に寄与します。「Slack」や「Chatwork」、「Microsoft Teams」などが代表的なツールです。
テキストチャットに加えて、ファイルの共有、グループ機能、タスク管理などの機能も備えており、情報共有や業務連携の手間を大幅に軽減できます。
従来FAXで行っていた書類のやり取りも、チャット上でPDFや画像ファイルを添付して送信するだけで完結します。
さらに通知機能により、送信した情報が見逃されにくくなる点もメリットです。
クラウドFAX
「FAXはまだ必要。でもペーパーレスで使いたい」という企業におすすめなのが、クラウドFAXです。クラウドFAXは、FAXの送受信をインターネット上で行えるサービスです。
クラウドFAXサービス「まいと~く Cloud」では、FAXの送受信をメールのように一元管理でき、紙を使わずにデジタルでやり取りできます。受信したFAXの閲覧・共有・振り分けも簡単です。外出先や自宅からでも確認できるため、テレワークにも適しています。
FAX業務の効率化を検討している企業様は、ぜひご検討ください。
まとめ
FAXは長年、企業間の重要な連絡手段として活用されてきましたが、デジタル化が進む現代においては、業務効率やコスト、セキュリティ面で課題も多くなってきています。特にテレワークやDXを推進する企業にとって、FAXの存在は足かせになりかねません。
とはいえ、すぐにFAXを廃止するのではなく、取引先との関係や業務の実態に合わせて、段階的に代替手段への移行を進めることが現実的です。FAXに依存した業務を見直し、時代に合った業務スタイルを検討してみてください。