コラム

FAXをOCRで電子化するメリット・デメリット|注目のAI-OCRも解説

企業間のやり取りにおいて根強く使用されているFAXですが、紙で送受信される特性上、情報の管理や検索性に課題があります。

そこで注目されているのが、FAX文書をOCR(光学文字認識)で電子化する方法です。OCRを活用すれば、紙に印刷された文字情報を自動で読み取り、テキストデータとして利用可能です。

今回は、FAXをOCRで電子化するメリット・デメリットや導入のポイント、近年注目されているAI-OCRについて解説します。

OCRとは?

OCRは「Optical Character Recognition」の略称で、日本語では「光学文字認識」と呼ばれています。この技術は、紙の書類や画像ファイルなどに記載された文字情報をコンピューターが読み取り、テキストデータとして再構成するものです。

従来、人間が手作業で入力していた文字情報を自動でデジタル化できるため、大量の書類処理やアナログ情報の電子管理において有効です。

例えば、FAXで送られてきた帳票や注文書、申込書などをOCRに通すことで、入力業務の省力化、情報の検索性向上、ミスの削減が期待できます。

OCRの処理プロセス

OCRが文字を認識し、デジタルデータ化するまでには、以下6つの手順を踏みます。

  1. 画像取り込み
    OCRの最初の処理は、対象となる書類や原稿をスキャナーやカメラを使って画像として取り込むことです。FAXの場合は、受信した用紙をスキャンすることで画像化します。ここで取り込む画像の解像度や明瞭さが、その後の文字認識精度に大きく影響します。
  2. レイアウト解析
    画像化された文書の中から、文字が配置されている範囲や位置を特定し、読み取り順序を決定する工程です。この工程が不正確だと、文字の読み飛ばしや順序の乱れが起きます。
  3. 行(項目)の切り出し
    レイアウト解析で決定された範囲をもとに、文章の行ごとや項目ごとにデータを切り出す作業です。この切り出しにより、データ構造が整い、後の文字認識工程がスムーズになります。
  4. 文字切り出し
    行ごとに分けられたデータの中から、1文字ずつ個別に抽出します。
  5. 文字認識
    切り出された文字を、コンピューターが判別可能なデジタルデータに変換します。ここでは、文字の特徴を抽出し、パターンマッチングや機械学習によって最適な文字を特定していきます。つぶれやかすれにも対応し、高精度な認識が可能です。
  6. 出力
    認識された文字データをWord・Excel・PDF・HTMLなどの形式で出力します。OCRソフトの多くは複数のファイル形式への変換に対応しており、業務に合わせたフォーマットで保存・活用が可能です。

近年はAI-OCRが注目されている

AI-OCRは、従来のOCRにAI技術を組み合わせて進化させたツールです。特に深層学習(ディープラーニング)による画像認識技術を応用することで、「かすれた文字」「斜めになった文字」「手書き文字」「複雑なレイアウト」にも高精度で対応できるようになっています。

従来型OCRでは難しかった、表組みや帳票のレイアウト把握、文字と背景の区別といった課題に対しAIが自動で学習・適応するため、業務の自動化が飛躍的に進む点がメリットです。

例えば、取り消し線が引かれた文字や、画像の中に溶け込むような文字も、AI-OCRであれば高い確率で認識します。

一方で、ローカルな環境で軽量かつコストを抑えて利用するのであれば、従来型のOCRがよいでしょう。業務の規模や精度の要求度に応じて、OCR技術を選択してください。

FAX文書をOCRで読み取るメリット

FAXは依然として多くの企業で利用されている通信手段ですが、紙ベースであることから、データの再入力や保管に手間がかかるという課題がありました。しかし、FAXで受信した紙文書をOCRによって電子化することで、アナログ業務の効率化が図れます。

特にFAXの廃止が難しい業種(医療・物流・製造業など)では、OCRを活用することで既存のFAX業務を維持しながらも、デジタル化による業務改善が可能です。ここでは、FAX文書をOCRで読み取るメリットについて解説します。

データ入力の手間が省ける

OCRを活用すれば、FAXで受信した文書を人手で入力する必要がなくなります。その結果、入力業務にかかる時間と労力が大幅に削減され、作業効率が大きく向上します。また、人の手による入力では避けられない誤入力のリスクも軽減され、データの正確性が保たれやすくなる点もメリットです。

特に、毎日大量のFAXを処理する業務では、OCR導入によって担当者の負担が大きく減り、他の業務に時間を割けるようになるため、全体の生産性も高まります。

保管・検索がスムーズになる

OCRによってFAX文書を電子化すれば、紙の保管・管理にかかっていたコストやスペースを削減できます。書類をキャビネットや倉庫に保管する必要がなくなり、オフィスのスペースを有効活用できます。

また、電子化された文書はキーワード検索が可能となるため、過去の資料を瞬時に見つけ出すことが可能です。従来のように紙を一枚ずつめくって探す必要がなくなり、業務スピードが格段に向上します。

さらに、デジタルデータとして共有もしやすくなるため、遠隔地の担当者と迅速に情報共有ができる点も大きなメリットです。

ペーパーレス化につながる

紙で受信したFAX文書をスキャンし、そのままOCRでデータ化すれば、紙の使用を最小限に抑えることが可能です。そして、紙代やインク代などの印刷コストも削減され、環境負荷の低減にもつながります。

また、電子化された情報はクラウドや社内サーバーに保存することで、テレワークやリモートワークとの相性も良くなります。

FAX文書をOCRで読み取るデメリット

FAXとOCRの連携には多くのメリットがある一方で、いくつか注意したいデメリットも存在します。ここでは、FAX文書をOCRで読み取るデメリットについて解説します。

導入費用がかかる

OCRやAI-OCRを導入する際には、一定の初期費用や運用コストが発生します。

一般的に、オンプレミス型のOCRシステムでは、初期費用として10~20万円、月額の保守やライセンス料が3万円程度発生します。

これらのコストは、中小企業にとっては導入のハードルになるかもしれません。

しかし、クラウド型のOCRサービスであれば、初期費用が不要、あるいは低く抑えられることが多く、月額課金で必要な分だけ利用できる柔軟性があります。

読み取り精度が高いとは限らない

OCRは万能ではなく、読み取り対象の状態によっては認識精度が下がることがある点に注意が必要です。特にFAXは印刷が粗かったり、文字がかすれていたりすることが多く、OCRでの誤認識が発生しやすい傾向があります。

また、FAXの送信元の解像度や機種によっても、受信品質に差が出ます。

OCRによって読み取った内容をそのまま使用するのではなく、内容を目視で確認するプロセスが必要となる場合も少なくありません。

FAX業務にOCRシステムを使う際の選び方

FAX業務にOCRを導入することで、大幅な業務効率化が期待できますが、導入効果を最大化するには自社の業務に合ったシステム選びが重要です。ここでは、OCRシステムの選び方を紹介します。

コストが適切か

OCRシステムのコストは、導入形式や提供形態によって大きく異なります。買い切り型のソフトウェアは一度の支払いで済むものの、将来的なサポートやアップデートに追加費用がかかることがあります。

一方、クラウド型のサブスクリプションサービスでは、初期費用が抑えられ、月額や年額での運用が可能ですが、長期的にみるとトータルコストが増える場合もあるでしょう。

また、利用人数やデータ量によって料金が変動するケースもあるため、自社の利用状況に応じた料金体系であるかを確認することが重要です。

読み取りの精度は高いか

OCRの主な導入目的は「手間のかかる入力作業の自動化」です。しかし、読み取り精度が低ければ、結局は人による補正作業が発生し、業務効率が落ちてしまいます。そのため、導入前には実際のFAX文書を用いて、デモ版での読み取り精度の検証が重要です。

また、読み取ったデータを確認・修正できるインターフェースや、誤認識を自動補正する機能があるツールを選ぶことで、運用面での手間を最小限に抑えられます。

さまざまな帳票フォーマットに対応しているか

企業が扱う帳票は、請求書や納品書などの「定型帳票」と、契約書や図面、手書きメモなどの「非定型帳票」に分かれます。

定型帳票はフォーマットが一定しており、OCRの設定も容易なため、高精度な読み取りが可能です。

一方、非定型帳票はフォーマットが一定していないため、設定や調整が複雑になりやすく、読み取り精度が下がる可能性があります。

そのため、どのような帳票が業務に多く使用されているかを把握した上で、対応できるOCRツールを選ぶことが重要です。

なお、AI-OCRであれば事前設定が不要で、帳票の種類を問わず読み取れる場合があります。

連携機能があるか

業務全体の効率化を目指すのであれば、OCRで読み取ったデータを他の業務システムと連携できるかも重要です。

例えば、受発注管理システム、在庫管理システム、顧客管理システムなどに直接データを取り込めれば、手入力の必要がなくなり、作業のスピードと正確性が大幅に向上します。

セキュリティ対策が充実しているか

請求書や契約書などの帳票には、顧客情報や金額、取引条件などの機密情報が含まれています。これらをデジタル化する以上、セキュリティ対策は必須です。

特にクラウド型のOCRツールを利用する場合、データの送信先や保管先が外部サーバーとなるため、暗号化通信やアクセス制限、ログ管理などが充実しているサービスを選ぶ必要があります。

まいと~く CloudならOCRシステムとの連携が可能

従来のFAX運用をデジタル化したい場合は、クラウドFAXサービス「まいと~く Cloud」が便利です。FAXの送受信をクラウド上で一元管理でき、紙の印刷や物理的な保管が不要になります。

メール感覚でFAXの確認・仕分け・共有ができ、テレワークや出張中でもオフィスと同じようにFAX業務が可能です。

また、OCRシステムとの連携にも対応しており、受信したFAX文書を自動でデータ化できます。データの入力作業が不要になるため、業務のスピードアップとヒューマンエラーの削減を実現します。

14日間、機能制限なしで利用できる無料トライアルも実施していますので、FAX業務の効率化を検討している企業様はぜひお気軽にお問い合わせください。

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まとめ

FAXは依然として多くの業種で利用されており、完全に廃止するのが難しい企業も少なくありません。しかし、OCR技術、特にAI-OCRの進化により、アナログなFAX文書も高精度でデータ化できるようになりました。OCRを活用すれば、データ入力の手間が省け、検索性が向上し、業務全体の効率化が可能になります。

導入する際は、コストや読み取り精度などに注意しつつ、自社の業務内容に合ったツールを選びましょう。また、クラウドFAXとOCRの連携を図る場合は「まいと~く Cloud」もご検討ください。

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