ISDNサービス終了によるFAX業務への影響は? 企業がとるべき対策も解説

ISDNについては、ディジタル通信モードが終了し、その補完策も2028年に終了します。ISDNの一部サービスの終了で問題になるのが、インターネット回線やFAX回線の移行です。
特にFAX回線については、この機会に業務フローの見直しを検討する企業も少なくありません。従来のFAX業務が非効率だと感じている担当者にとっても、移行は改善の契機となるでしょう。今回は、ISDNの一部サービスの終了の詳細や企業のとるべき対応策について解説します。
ISDNとは?

ISDNは、Integrated Services Digital Networkの略称で、デジタル信号を利用した通信回線です。ISDNの特徴は多重化されたデジタル回線です。1本の電話線を引くだけで、複数のデータ通信や通話を同時に行えます。
また、デジタル信号でデータや音声を送受信する仕組みのため、アナログ回線と比べて、高速のデータ通信ができ、盗聴されにくい特長もあります。
日本国内では、2024年1月にISDNのサービスの一部である「ディジタル通信モード」の提供が終了しました。ディジタル通信モードはインターネット通信を指し、ISDNのもうひとつの機能である音声通話は引き続き利用できます。
2028年12月31日にISDN(INSネット)関連サービスの補完策が終了
ISDNのディジタル通信モードの終了に伴い、切り替え後のINSネット上のデータ通信(補完策)の提供が始まりました。
INSネット関連サービスについて、移行スケジュールなどが公表されたのは2017年です。2019年まで移行方針の議論や準備が行われ、2024年1月からディジタル通信モードの段階的なサービス終了となりました。
これに伴い、切り替え後のINSネット上のデータ通信(補完策)の提供が行われています。2024年8月31日には、INSネットの新規販売が終了しました。
当面の対策として提供されていた補完策は2028年12月31日をもって終了し、INSネット関連サービスの提供が終了する見込みです。
ISDNサービスが終了する背景

ISDNのインターネット関連サービスが段階的に終了する理由は、主に2つです。
利用者の減少
ISDNのインターネットサービスが終了となったのは、利用者が減少したためです。高速かつ品質の良い光回線が普及したことで、ISDN回線からの乗り換えも増えました。法人では、通信環境を柔軟に構築できるVoIPなども選ばれています。
また、スマートフォンが普及したことで、固定電話自体の利用が減少している背景もあります。
設備の老朽化
ISDN回線のために使われる設備の老朽化も、ISDNのインターネットサービス終了の背景にあります。
老朽化により機能の維持が困難となっており、設備を更新するにしても多額のコストが通信事業者にかかるためです。
従来の設備から、ルーターやIP網を利用したシステムに置き換えられていることも、ISDNの一部サービスの終了の背景にあります。
ISDNサービス終了により企業が受ける影響
ISDNのディジタル通信モードの終了は、企業にも影響を及ぼします。
なかでも懸念されるのがEDI(電子商取引)への影響です。EDIは、インターネットを介してメーカーと卸売業者、小売業者間で商品の受注発注を行うシステムです。
ISDNが普及した1990年代にEDIを導入した企業では、ISDN回線を利用していることを担当者が把握していない場合もあります。本社での利用がなくても、拠点の一部でシステムが更新されていないケースも想定されます。
また、EDI以外にも以下のようなシステムでもISDN回線が使われている可能性があるため、利用状況の確認と回線の変更が必要です。
- 企業内WAN(企業内ネットワーク)
- G4FAX(マルチコピー複合機を利用したFAXの送受信)
- CAT端末(クレジットカード会社と店舗間のデータ通信)
- POSシステム(本部と店舗間のPOS端末によるデータ通信)
- 銀行ATM(ATMと銀行間のデータ通信)
- オンラインバンキング(銀行口座の照会や振込)
- レセプトオンライン請求(診療報酬に関するデータ通信)
- 警備端末(警備会社と企業または一般家庭との映像通信)
- ラジオ放送(中継や他局への配信)
ISDNサービス終了を受けて企業がとるべき対応

ISDNのディジタル通信モードの終了と2028年の補完策の終了に伴い、企業が取り組むべき対策を紹介します。
光回線など別のサービスへ切り替える
ISDNのディジタル通信モードの終了によりインターネット機能が使用できなくなるため、別のインターネットサービスへの切り替えが必要です。
電話は、ひかり電話や他のIP電話サービスに移行する方法が考えられます。インターネットは、光回線などへの切り替えが必要です。
インターネット回線は、閉域ネットワークを導入する方法もあります。閉域ネットワークは、強固なセキュリティ対策を必要とする企業間のデータ通信などに適しています。
システムを刷新する
ISDN回線を利用していたEDIやPOSシステムなどは、ディジタル通信モードの終了の影響を受ける可能性があると紹介しました。
利用しているシステムによっては、新しいシステムへの転換を余儀なくされるケースもあります。システムを刷新する場合は、システム運用の見直しや利用する従業員への教育などの時間が必要です。
予算の確保と工事の手配
システムを刷新するには、導入のための費用がかかります。新規システムの導入が必要な拠点の数が多いほど費用も導入までの時間もかかるため、早期の予算計画や見積りの取得が必要です。
また、ISDNからの移行は、回線の変更による工事や電話交換機の変更などが伴うこともあります。業務に支障が生じないよう、事前に計画を立てて実行に移していく必要があります。
ISDNサービスの終了はFAX業務にも影響する?
FAX回線には、G3、スーパーG3、G4の主に3つの規格があります。G3はアナログ回線、スーパーG3はアナログ回線や光回線、G4はISDN回線を利用した規格です。
3つの規格のうち、ISDNのディジタル通信モードの終了は、G4規格に影響します。G4規格のFAXを利用している場合は、別の規格への移行が必要です。
なお、一般的に広く利用されているFAX回線はG3規格であるため、基本的にはISDNのディジタル通信モードの終了の影響は限定的です。
電話回線の利用のみであれば、そのままIP網への移行が行われ、ディジタル通信モードの終了後も引き続き、FAXを利用できます。
この機会にクラウドFAXへの転換を
G4規格でなければ、IP網の移行後もそのままの環境でFAXを利用できます。しかし、従来の紙ベースでのFAX業務では、業務効率化やコスト削減などの課題は解決できません。
ISDNのディジタル通信モードの終了を機に、FAX環境を刷新するのもお勧めです。従来のFAXからクラウドFAXに移行することで、コスト削減やペーパーレスによる業務効率化、情報漏洩の問題を解決できます。
クラウドFAXを導入するのであれば、「まいと~く Cloud」のご利用を検討ください。
「まいと~く Cloud」は、初期費用0円で、回線やサーバー不要で導入できるクラウドFAXサービスです。FAX送受信をメール感覚で一元管理できるため、業務効率化が期待できます。
FAXの閲覧、振り分け、共有をすべてクラウド上でできるため、自宅でもオフィスと同様にFAX業務が可能です。テレワーク導入を進めている会社にもお勧めです。
まとめ
ISDNについては、2024年にディジタル通信モードの段階的終了がはじまり、補完策も2028年12月31日の終了が公表されています。利用中の企業では、インターネット回線の変更やFAX回線の変更などが必要です。この機会に、従来型のFAXをクラウドFAXに切り替えることをお勧めします。