コラム

ログ改ざんを防止する方法は? 手口やリスク、有効なツールを解説

ログ改ざん 防止
ログ改ざんを防止する方法は? 手口やリスク、有効なツールを解説

ログの改ざんは、サイバー攻撃の痕跡を消し、被害の発見や対応を困難にする悪質な行為です。そのため、攻撃者の手口や改ざんがもたらす影響を理解し、基本的な防止策やシステムによる対策法を知ることが、企業のセキュリティ強化には不可欠です。では、実際に企業はどのような対策を実施すればいいのでしょうか。

本記事では、ログの改ざんの手口やリスク、防止に有効なツールなどを解説します。

ログの重要性

システムやネットワークが日々生成するログは、企業のIT運用やセキュリティ対策において極めて重要な情報源です。

ログには、様々な種類がありますが、例えば「認証ログ」はログインなどの認証の履歴を記録し、「操作ログ」はシステム上でのユーザーの行動を記録します。また「イベントログ」はシステムの状態変化や異常を示し、「通信ログ」はネットワーク間のデータ送受信を記録したログです。それぞれが異なる目的で活用され、トラブルシューティングや不正アクセス、情報漏洩の調査などにログの確認は欠かせません。

特にセキュリティの観点では、サイバー攻撃や内部不正が発生した際、ログはその重要な証拠となります。ログが正確に記録・保管されていなければ、原因の特定や再発防止策の立案が困難になるばかりか、被害が拡大する可能性もあります。そのため、ログの取得・保管・監視体制を整備し、ログを改ざんされないようにすることが、情報セキュリティ対策の第一歩と言えるでしょう。

ログ改ざんの手口

ログ改ざんは、サイバー攻撃や内部不正の痕跡を隠す目的などで行われる、悪質な行為です。攻撃者は、自身の行動履歴が記録されたアクセスログなどの内容を削除したり書き換えたりすることで、不正の発覚を遅らせようとします。

改ざんの手口にはいくつかのパターンが存在します。シンプルな方法として挙げられるのは、テキストエディターなどでログファイルを直接編集する方法です。これにより、正常な動作を装ったログを偽造します。また、システムに悪意のあるコードを実行させて偽のログを記録させるログインジェクション攻撃なども見られるようになり、手口は年々巧妙化しています。

特に注意が必要なのは、内部不正によるログ改ざんです。システムの管理権限を持つ人物がログを改ざんしようとする場合、自身の操作ログを削除したり痕跡を残さないように偽装したりすることは容易です。このようなケースは、一般的な監視体制やログ改ざん対策では不十分なため、内部不正を想定したより高度な対策が求められます。

ログ改ざんによるリスク

ログが改ざんされることによって、企業は様々なリスクにさらされます。例えば、不正アクセスや情報漏洩といったインシデントがあった際に、初動対応の遅れと、被害の拡大を招く可能性があります。

また、サーバー侵入など犯行の痕跡がログ改ざんにより消されていれば、セキュリティ担当者は攻撃の経路や手口を特定できず、加害者への法的な責任追及ができない事態にもなりかねません。企業の内部統制の場面でも、会計不正が疑われるケースで関連データの操作ログが改ざんされていれば監査が困難になり、企業のガバナンスに対する信頼が損なわれる恐れもあります。

さらに、近年では標的企業そのものではなく、その企業とつながる関連企業や取引先などの脆弱性を突いて侵入するサプライチェーン攻撃の被害に遭う企業も増えていますが、このような脅威に対応する際もログが重要になります。どの企業が、どのような原因で最初に攻撃を受けたかといった分析は、システムのログが正確に残されていなければ困難です。

このように、ログ改ざんは単なる技術的な問題にとどまらず、企業経営や社会的信用にも大きな影響を及ぼすリスクであることを押さえておかなければなりません。

併せて読みたい

ログ改ざんによる被害を防止する方法

ログの改ざんによる被害を防止するには、1つの対策を導入すればいいわけではなく、様々な視点から複層的な対策を導入するのが効果的です。代表的な対策としては、下記の3つの方法が考えられます。

ログ改ざんの被害を防止する主な方法
項目 概要
ログへのアクセスの管理 アクセスできる管理者とその権限の範囲を最小限に抑え、管理者であっても操作記録が残るような体制を整備
ログの適切な保管とバックアップ ログは、ログの取得対象のシステム・データとは別のサーバーやクラウド上に転送・保管し、定期的にバックアップも取得
改ざん検知体制の構築 ログ監査の自動化とアラート機能の導入で、改ざんにいち早く気付く仕組みを構築

ログへのアクセスの管理

ログ改ざんを防止するには、「誰がログにアクセスできるか」を厳格に管理することが重要です。アクセスできる管理者とその権限の範囲を最小限に抑え、管理者であっても操作記録が残るような体制を整えましょう。

例えば、ログデータの暗号化を実施すれば、第三者がログを不正に取得しても内容を判読できません。また、管理者の認証の際に多要素認証の導入やIPアドレスによる制限などを行えば、ログデータへの不正アクセスを制限できます。

加えて、アクセスログそのものの監視や定期的な監査も不可欠です。どのユーザーがいつログにアクセスしたかを把握できるようにして、異常なアクセスがあれば即座に対処できるような仕組みを整えることで、内部不正などを抑止できます。

ログの適切な保管とバックアップ

ログの適切な保管とバックアップも、ログ改ざんによる被害を抑えるためには重要な視点です。ログのデータを記録対象となるデータやシステムのサーバーと同じ場所に保存していると、不正アクセス時に同時に改ざんされるリスクがあります。

そのため、ログは別のサーバーやクラウド上に転送・保管するのが基本です。管理者が異なる環境に保管することで、内部不正も防ぎやすくなります。

また、定期的にバックアップを取得しておくことで、万が一改ざんが発生した場合でも、正常なログを復元できます。

改ざん検知体制の構築

ログ改ざんによる被害を抑えるためには、改ざんにいち早く気付く仕組みを構築することも重要です。改ざんの兆候を検知するためには、ログ監査の自動化とアラート機能の導入が有効です。

詳細は次の項目で解説しますが、例えばSIEM(Security Information and Event Management)などのログ分析ツールを活用すれば、大量のログをリアルタイムで監視し、不審な変更や操作があった場合は即座に検知できます。

また、万が一改ざんが発生した際の対応フローも明確にしておくことで、迅速な初動対応と被害の最小化が可能になります。技術面と運用面の両方から、改ざん検知の仕組みを強化することが重要です。

ログ改ざん防止に有効なツール

ログ改ざんのリスクに対しては、専用のツールを活用することで防止効果を高めることができます。下記では、改ざんの検知や抑止に有効な代表的な3つのツールを紹介します。

ログ改ざんの防止に有効な主なツール
名称 概要
SIEM 様々なシステムから収集されるログを一元的に管理・分析し、リアルタイムで異常を検知できるセキュリティ対策特化型のツール
ログ管理システム ログの収集・保管の効率化を主な目的としたツールだが、暗号化機能や異常時のアラート機能のある製品を活用
IDS・IPS(不正侵入検知・防止システム) ネットワークを常時監視し、不正アクセスや攻撃を検知・防御

SIEM

SIEMは、様々なシステムから収集されるログを一元的に管理・分析し、リアルタイムで異常を検知できるセキュリティ対策特化型のツールです。

大量のログを手作業で確認しなくても、不正の兆候を自動で発見できるというメリットがあります。例えば、通常とは異なる時間帯のログインや、短時間のアクセス集中などがあってもシステムが自動的にログを分析することで、攻撃の早期発見が可能です。

また、SIEMはログを安全な形式で保管する機能も備えている製品もあるため、改ざん防止と証拠保全の両面で有効です。

ログ管理システム

ログ管理システムは、ログの収集・保管の効率化を主な目的としたツールですが、セキュリティ運用の効率化と強化に役立つ機能を備えた製品もあります。ログ管理システムの中には、ログデータの暗号化機能が搭載されている製品もあり、改ざんを未然に防ぐことが可能です。

また、異常な操作やログの改変を検知した際には自動でアラートを出す機能があるケースもあり、早期の初動対応に役立ちます。ログ管理を効率化するシステムとして、ログの分類・検索機能も充実しているため、必要なログの迅速な抽出と分析も可能です。

併せて読みたい

IDS・IPS(不正侵入検知・防止システム)

IDS(Intrusion Detection System:不正侵入検知システム)とIPS(Intrusion Prevention System:不正侵入防止システム)は、ネットワークを常時監視し、不正アクセスや攻撃を検知・防御するシステムです。ログ改ざんは基本的に不正侵入の後に行われるため、その前段階での侵入を防ぐことは有効な対策となります。

IDSは不正アクセスを検出し、管理者に通知します。一方、IPSは不正アクセスを自動的にブロックし、被害を未然に防止することが可能です。いずれも、攻撃者がログを改ざんする前に対応できるため、予防的なセキュリティ強化につながります。

近年では、AIや機械学習を活用した高精度な検知機能を備えた製品も登場しており、サイバー攻撃の多様化にも対応できるツールです。

併せて読みたい

サイバー攻撃や内部不正の痕跡を消されないように、ログ改ざんへの対策も検討しよう

ログ改ざんは攻撃者の痕跡隠蔽手段であり、早期発見と防止が企業のセキュリティに不可欠です。ログの重要性や改ざんの手口・リスクを理解し、被害を防ぐための基本的な対策を整えることが重要となります。

そのためには、SIEMやログ管理システム、IDS・IPSなどの最新ツールも活用しながら、包括的な対策を実践していきましょう。

インターコムの「MaLion」シリーズも、パソコンの操作ログの取得が可能で、ログの改ざん防止もできるツールです。管理ツールの操作ログをすべて記録できるため、管理者による内部不正があった際も、犯人究明や抑止に役立ちます。また、統合ログ管理システムの「Logstorage」を併用することで、MaLionが記録するPC操作ログをストレージに長期保管し、ログの暗号化や改ざん検出も可能です。ログ改ざんへの対策をお考えの場合は、ぜひご相談ください。

「MaLion」シリーズのラインアップ
クラウド版 オンプレミス版
MaLionCloud
MaLion 7
▲