コラム

課題別! 年末調整電子化のポイント:5年経っても「紙」が消えない理由と対策

年末調整とは、毎月の給与から源泉徴収された所得税の過不足を年末に計算し、正しい税額を確定する手続きです。2018年(平成30年)の税制改正により、各種資料を電子データで提出・管理できるようになりました。多くの企業でデジタル化が進む一方、いまだに「従来通りの紙の手続き」から脱却できずにいる企業も少なくありません。

今回は、年末調整の電子化における実態と、企業の課題に合わせた取り組みのポイントを解説します。

企業の年末調整、電子化は道半ば

年末調整の完全電子化には、「取得」と「提出」の両立が不可欠

従来の年末調整では、従業員が保険会社から届く保険料控除証明ハガキをもとに、手書きで保険料控除申告書を作成し、勤務先に提出するのが一般的でした。2018年の税制改正により、「控除証明書の取得」と「控除申告書の提出」を、それぞれデータで処理できるようになっています。

年末調整を完全に電子化するには、従業員による「データ取得」と「データ提出」の双方を電子化する必要があります。すべてを一度に切り替えるのではなく、「一部電子化」から段階的に進めることも有効です。

参考:国税庁「e-Tax等による法定調書の提出が義務化されています!

「紙ベース」での年末調整から脱却できない企業も

2018年の税制改正を受け、2020年10月から年末調整の電子化が本格的にスタートしました。制度開始から約5年が経過した現在、「電子化・効率化を進める企業」と「従来の書面での手続きを脱却できない企業」との二極化が進んでいます。電子化が進まない背景には、準備時間の不足や社内体制の整備といった高いハードルがあるようです。

ここからは、電子化にあたり企業が直面しやすい課題を3つのケースに分け、具体的な取り組みのポイントをご紹介します。

課題別!年末調整電子化のポイント

課題1:従業員からの理解が得られない

従来のやり方を変えようとしても、「今のままで困っていない」「新しいやり方を覚えるのが面倒」といった理由で、従業員に電子化を拒否されてしまうケースです。こうした場合は、従業員側のメリットを具体的に伝えることが重要です。

主なメリット

記入の手間やミスが大幅に減る
  • 多くの電子申告システムでは、マイナポータル連携や前年データの引き継ぎができます。入力作業の負担が軽減され、確認の手間も減ります。
  • 記入内容や計算の自動チェック機能が備わっているシステムも多く、書類不備を削減することで再提出の手間を減らすことができます。
紙のやり取りや管理から解放される
  • 控除証明書ハガキの紛失リスクがなくなり、再発行の手続きに追われることもありません。
  • 控除申告書に不備があった場合に、一から書き直したり、担当者と従業員の間で原本をやり取りしたりする必要がなくなります。
都合のよい時間・場所で手続きできる
  • 多くの電子申告システムがスマートフォンに対応しています。自宅や移動中など、場所を選ばず手続きできます。

プラスアルファの工夫もおすすめ

従業員への具体的なインセンティブを用意することで、前向きな協力をさらに引き出しやすくなります。例えば、電子化に伴う作業時間や人件費の削減を活用し、「還付金の支給を早める」「電子申告者に小さな特典を用意する」といった取り組みが検討できます。

課題2:従業員のITリテラシーに不安がある

パソコンやスマートフォンの操作に不慣れな従業員が多く、電子化に踏み切れないケースです。電子化を急ぐあまり準備が不十分になってしまうと、かえって現場の混乱を招く恐れがあります。スモールステップで導入を進めることで、現場の様子にあわせた段階的なフォローができるようになります。

具体的な取り組み例

説明会や講習会を実施する
  • 対面やオンラインで操作方法を説明することで、操作に不慣れな従業員の不安を軽減できます。
  • 操作に不安がある従業員を集めて、その場で一緒に手続きを完了させる「入力相談会」もおすすめです。まとめて手続きを進めることで、個別の問い合わせを減らすことができます。
一部の従業員からスモールスタートする
  • 初年度は管理部門のみ、管理職以上のみなど、電子化の対象を一部に絞り、成功事例を作ってから翌年に全社展開する方法も有効です。次年度以降は、従業員同士で操作をサポートし合う体制の定着も期待できます。
「事前準備」のステップを段階的に設ける
  • 年末にいきなり年末調整の手続きに入るのではなく、スケジュールを分散して事前準備を進めましょう。例えば、以下のような手順が有効です。
    8月:控除証明書データの取得準備(マイナポータル連携や保険会社等への申請手続き)
    10月:専用ソフトのダウンロードと初期設定

課題3:予算に限りがあり、コストをかけられない

年末調整の電子化に対応するソフトは様々ですが、いずれも機能に応じた導入コストがかかります。コストを理由に電子化を見送っている場合には、国税庁が無料で提供している「年調ソフト」の活用から始めてみましょう。

「年調ソフト」の特長

従業員が控除申告書を作成できる専用ソフト

パソコンやスマートフォンにインストールして使用します。従業員は、画面上で控除申告書を作成し、データもしくはPDFで出力することができます。マイナポータル連携や質問形式の入力支援など、便利な機能が搭載されています。

多くの給与計算ソフトと連携

多様な給与計算ソフトとデータ連携が可能です。自社で使用している給与計算ソフトと連携していれば、従業員から回収した申告データをそのまま給与計算ソフトに取り込むことができます。

PDF回収なら控除申告書原本が不要に

自社の給与計算ソフトと連動していない場合でも、「年調ソフト」で作成した控除申告書PDFを回収すれば、紙の原本は不要になります。判読不能な文字や転記ミスといった手書きによる不備を防ぐことができます。

参考:国税庁「年末調整手続の電子化に関するパンフレット

まとめ

「段階的な移行」も検討、できることから電子化を

年末調整の電子化は、一度にすべてを完璧に行う必要はありません。「まずは控除申告書の作成だけ」「まずはこの部署だけ」といった段階的な移行でも十分に効果があります。直前になって慌てないよう、早い時期から社内の課題を整理し、準備を始めることが重要です。

年末調整の電子化は「Web給金帳Cloud」

Web給金帳Cloud」は、給与明細書をはじめ、賞与明細書や源泉徴収票、オフィス文書などを電子化し、パソコン、スマートフォン、タブレットから自由に閲覧できるクラウドサービスです。標準機能で国税庁「年調ソフト」と連携しており、追加費用なしで年末調整の電子化を進めることができます。「コストを抑えながら年末調整を電子化したい」という方は、ぜひご検討ください。

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